9月20日(土)、エリアAの鈴鹿医療科学大学にて,観察実験講座『ミクロな分子の世界に挑もう』が行われました。鈴鹿医療科学大学医療栄養学科の若林成知先生です。
始めに、受講生たちは「私たちの体や身の回りのものは、何からできているのか。」について、これまでの生活経験や学習したことから考えました。その後、すべてのものは、目に見えないほど小さな粒である『原子』が集まってできていること、原子は目に見えないくらい小さなものであることを学びました。
今回の講座では、原子と分子に着目して物質の性質について考えていきます。

まずは、身近な物質である炭素原子からなる分子に着目しました。鉛筆の芯(黒鉛)とダイヤモンドは同じ炭素原子で構成されているのにも関わらず、つながり方によって異なる性質の物質になるということ、これを『同素体』ということを学びました。また、グラフェンやフラーレンも同じく炭素原子で構成されている同素体ですが、発見・研究されたことによって、次世代のエレクトロニクス材料として幅広い分野での製品開発が進められていることも知りました。
受講生は、ひとつの原子から様々な性質の物質ができることに、興味を示していました。
次に、分子の模型を用いて、分子を組み立てるという課題に取り組みました。各原子の結合の手の本数にはそれぞれ決まりがあることを学び、決まりを意識しながらメタンやエタノールの分子模型をつくることができました。手を動かして模型を組み立てることで、小学生の受講生も原子の結合のルールを理解することができました。

それから、同じ原子で構成されている分子でも、原子のつながり方によって違いが生じることを学びました。世の中に存在する物体は、球などの鏡に映しても形が変わらないアキラルな物体と、野球のグローブなどの鏡に映すと形が変わるキラルな物体の二つに分類されます。
受講生は、コルク栓抜きやハサミのように右利き用と左利き用があるものを鏡に映して、キラルな物体がどんなものなのかを確かめていました。その後、鏡を活用してキラルな分子の模型をつくることにチャレンジしました。
始めは課題に苦戦していた受講生ですが、何度も分子模型を組み替えることでキラルな分子をつくるための条件に気づくことが出来ました。そして、それが不斉炭素原子と呼ばれていることを学習しました。


さらに、鏡像関係にあるキラル分子は、生命現象に関わるときに性質の違いが出ることを学びました。その一例として、右型と左型のリモネンの匂いが挙げられます。受講生は、実際にそれぞれのリモネンの匂いを嗅ぎ、右型はオレンジの香り、左型は松の葉の香りがすることを確かめることができました。
しかし、過去には、生理活性の異なるキラル分子が混合してしまうことで、サリドマイド系薬剤によるアザラシ肢症などの薬害事件が発生しています。当時は、人工的に右型と左型の分子を作り分けることは不可能だとされていました。
このような社会的な課題に向き合い、実現が困難だと言われていた右型と左型の分子をつくり分けることに成功した科学者がいます。それが、2001年にノーベル化学賞を受賞した野依教授です。受講生は、野依教授のドキュメンタリー動画を視聴し、その仕組みについてだけでなく、野依教授の科学への向き合い方を学習しました。
さらに、化学分野で功績を残した、様々な教授の名言や研究の姿勢について紹介していただきました。最後に、若林先生から受講生へ「憧れと感動、そして志を大切に」というお言葉をいただきました。
今回は、分子という目に見えない物質について学習しましたが、模型を用いることで分子の存在や原子の結びつき方で性質が変わるという面白さに触れることができました。
また、研究者たちの科学に対するチャレンジ精神にも触れることができました。受講生の皆さんの憧れる研究者は見つかりましたか?憧れを大切に、探究し続ける受講生の皆さんの姿が見られることを楽しみにしています。