エリアA(三重大学):観察実験講座を行いました

5月22日(土)Zoomミーティングを用いて、三重大学教育学部技術教育講座の松本金矢先生による観察実験講座「科学と技術―日本と世界の技術・ものづくり教育事情―」が行われました。

本講座では、世界と日本のものづくり教育の違いや、ものづくりと科学を組み合わせて考えることの大切さを学ぶことができました。

まずは松本先生の自己紹介です。

新幹線やゴルフクラブのシャフト、スポーツシューズ、自動車の部品など、様々な“ものづくり“に携わっていらっしゃる松本先生。

その活動はお仕事に留まらず、趣味としてもオーディオをオリジナル製作してご友人にプレゼントしたり、自動車を自ら修理したりされているそうです!

★松本先生からのメッセージ
「自分の学んだことを生活の中で応用していく、生活全体でものづくりや自然科学の発想を活かすことが大切。」

続いて、日本と世界の技術・ものづくり教育事情のお話です。

松本先生によると、日本の技術・ものづくり教育は世界と比べてはるかに不足しているというのです。

どういうことかというと、例えば、海外ではすべての生徒(小学校1~6年生)は旋盤や溶接という道具を使って自分でバーベキューセットを作れるくらいが当然!というほど技術・ものづくり教育が充実しているそうなのです。

対して日本では、用意された部品をくっつけて完成。という程度で、ものづくりの本質についてはほぼ何も教えていないに等しい。そう松本先生は仰いました。

なかなかショッキングな事実ですね。メンター含め、参加者全員が聴き入ってしまいました。

さらには、日本の義務教育についても苦言を呈されました。小学校の算数と理科はまったく縦割りされていて、それらを結びつけて考える部分は子どもたち自身に委ねられている。とのことです。

例えば、ハイブリッド自動車の開発には機械工学の専門家と電気工学の専門家が、お互いに機械工学の考え方と電気工学の考え方を組み合わせて考えることが必要不可欠でした。このように、ある一つの分野だけでなく他の分野すべてを組み合わせて思考することが現実の問題を扱うにあたって非常に大切だ、ということを強調されました。

ものづくり×科学の一例として、「遺伝的アルゴリズム」をご紹介いただきました。これは、生物学の遺伝という発想をものづくりに取り入れて、ものの最適な形を導き出す技術です。

例えば、最も軽くて丈夫な橋の構造はどのようなものか知りたいとき。橋Aと橋Bを交配させて子ども橋をつくります。さらに交配を繰り返すうちに生き物と同じで淘汰され、最後は最適な構造になる。といった使い方をします。

講座では、実際にパソコンで遺伝的アルゴリズムの実験をするところを見せていただきました。

なかなかハイレベルな内容でしたが、みなさん前傾姿勢で見入っていましたね。

講座では、ものづくり×科学の練習を実際にやってみました。取り組んだのは、星形多面体の製作です。

複雑そうに見えるこの模型を、どうすれば一枚の画用紙からうまく組み立てられるか。手を動かしながらみんなで考えました。

作業後、感想をみんなで共有しました。「頭の中で考えるのと手を動かすのとでは全然違う」といったコメントが出ました。

最後に松本先生から

・ものづくり×科学=みんなを幸せにする
・限られた材料の中でも、頭を使えば素晴らしいものが生み出せる
・頭だけじゃなく、実際に手を動かして初めて見えてくることもある
・ものの形にはすべて意味がある!ぜひ生活の中で見つけてみてほしい

という大切なメッセージをいただきました。

子どもたちからも、「鉛筆やペンが丸いのは何か意味があるんですか?」といった質問が飛び出しました。

生活を楽しく豊かにするものづくりのプロフェッショナルである松本先生から多くの刺激を受けることができました。日常の中でもものづくり×科学の精神を実践していきたいですね。